ナナフシ食草ノオト(3)リュウノヒゲ

 リュウノヒゲは常緑の多年草で、庭の樹木の下に植える下草(グランドカバー)として人気がある。冬でも葉を茂らせているので、冬期のトゲナナフシのエサとして使っている。しかし、トゲナナフシの食草として本当に相応しいのかどうか、いまひとつ分からないところがある。
   
  (写真)庭のリュウノヒゲ / ベランダ水耕栽培リュウノヒゲ

 トゲナナフシを採集した実家の庭にはリュウノヒゲがたくさん生えている。リュウノヒゲに食痕は見つからなかったのだが、試しに与えてみたところ食べたので以来食草として用いている。しかし、すごく好んで食べるというほどでもない。そもそもリュウノヒゲは害虫が付きにくい植物のようだ。トゲナナも本当はあまり食べたくないのかもしれない。アマミナナフシは、リュウノヒゲを全く食べない。
 
  (写真)リュウノヒゲとトゲナナフシ(2003)

 庭の下草として植えられるリュウノヒゲには、雑草の発育を抑制する作用があるのだという。リュウノヒゲに含まれるサリチル酸が他の植物の生育を阻害するそうだ。サリチル酸は解熱鎮痛作用をもつことで知られる。ちなみに、解熱鎮痛剤として用いられるアスピリンは、アセチルサリチル酸である。

 さらに、リュウノヒゲの根を乾燥させたものは麦門冬(ばくもんどう)呼ばれ、咳を抑える働きがある。葉に解熱作用、根に鎮咳作用をもつリュウノヒゲはいかにも風邪に効きそうだ。ところで、トゲナナは風邪をひくのだろうか。トゲナナは咳をしないので風邪をひいているかは分かりにくいが、きっと昆虫の風邪(気道のウイルス感染)もあるはずだ。(注意:ここに記載されている内容は筆者の感想であり、リュウノヒゲをヒトの風邪の治療に用いてはいけません。)

 このようにナナフシ食草として相応しいかは分からないのだが、リュウノヒゲは強健で育てる手間のかからない植物なので、ベランダの片隅に植えておいて冬の食草としてたまに使うのにはよいのではないだろうか。リュウノヒゲは、強い日光を必要とせず半日蔭で十分に育つだ。日の当たらない飼育ケースに入れっぱなしにしても簡単に枯れたりはしない。
 
 なお、リュウノヒゲは、冬に美しい青色の実を付ける。普段は葉の陰に隠れて目立たないのだが、葉をかき分けると鮮やかな実が姿を現す。