年老いたトゲナナフシを介護する

 昨年10月下旬に採集したトゲナナフシが、5月になってもまだ生存している。
 驚くべき生命力だ。正直、ここまで長生きするとは思っていなかった。
 
  以前にトゲナナフシの足が次々に脱落していることを書いたが、5月20日にはさらに1本の足が落ち、2本だけになってしまった。木の枝に登ることはもうできないけれども、2本の足でゆっくりと床を這って移動している。

 年老いたトゲナナフシの飼育を行うことで、勉強になることがたくさんあった。トゲナナフシの健康の鍵は水分であることも分かった。現在のトゲナナフシは体力が低下しているので、乾燥気味になるとまったく動かなくなってしまう。しかし、霧吹きで水をかけてやると、とたんに元気になって食草を食べ始める。衰弱したトゲナナを回復させるには、まず十分に水分を与える必要がある。

 このトゲナナフシは、自然界ならとっくに絶命しているはずだ。このようなトゲナナの延命を行うことは自然の摂理に反する気もするが、2本の足で体を支えながら、ひたすらに草を食んでいるトゲナナを見ていると、こちらまで元気づけられるのだった。

 老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた (新潮文庫) 老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた (新潮文庫)
 老いと介護についての、とてもためになるエッセイ集。ヒトは「歳をとればとるほど、性格が煮詰まってくる」そうです。