昨日の論文の続きです。国生定男 (1979). サツマコフキコガネに関する研究 生態について 日林九支研論 32, 283-284。
この研究によれば、サツマコフキコガネはかなり深い地中で産卵し、羽化も地下深くで行われるようです。産卵深度は野外で55cm~95cm、室内実験で5cm~90cm うち90cmが78.4%と記載されています。幼虫が育つ深さについては言及されていませんが、50~100㎝で育つと仮定しておきましょう。実際には、幼虫期間は浅い位置に移動する可能性もあります。
なお、地表近くの土壌では、気温の影響をうけて地温変化が大きいですが、50cmの深さでは一日の変化がなくなるようです。はたして、コフキ幼虫が育つ地中の温度はどれくらいなのでしょうか?
日本の地下50㎝~100㎝での地温のデータを検索してみたところ、日本の地温データというのが公開されていました(東京大学大学院農学生命科学研究科 溝口研究室)
15年分(1938-1952)を取り出して、グラフにしてみました。
福井県の地温データ(1938-1952)
日本の地温データをもとに作成
http://www.iai.ga.a.u-tokyo.ac.jp/mizo/research/soildb/ground_T_db.html
これをみると、最も寒い冬で7℃前後、暑い夏で25℃前後というところでしょうか。コフキ幼虫の飼育温度の参考にしたいと思います。ちなみにヒメコガネというコガネムシの飼育論文では、幼虫を25℃恒温室で飼育していました。また、休眠覚醒させて幼虫期間を短縮するために、3齢幼虫を10℃で低温処理しています。(廿日出 正美・八木 雅久 (1990). ヒメコガネの大量飼育法について 芝草研究 19, 5-14)。同様の方法で、コフキコガネ幼虫の飼育期間を短くすることは可能でしょうか。
参考:福井県 福井 の気候(雨温図 1981~2010)
https://weather.time-j.net/Climate/Chart/Fukui