イチジクについて語るとき僕が語ること

先日、イチジクをくれた友人から、また30個あまりのイチジクをもらいました。
採れすぎて食べきれないそうです。
本当にうらやましい限りです。


 


僕がイチジク好きなのは、子供のときの楽しい思い出と結びついているからだと思います。
田舎の僕の家の近所には、大きなイチジクの木があって実をとって食べていました。
甘酸っぱくて美味しかったですねぇ。
イチジクの持ち主の許可を得ていたかどうかは、朧げな記憶の彼方で、思い出せないのですけれど。


イチジクの木の近くでは、よくゴマダラカミキリが採れました。
ゴマダラカミキリはメカニカルな外観で、当時はずいぶんカッコいい昆虫に見えました。
昆虫好き小学生だった僕は飼育に挑戦しましたが、結局成功しませんでした。
ゴマダラカミキリは、成虫・幼虫ともイチジクやヤナギなどの生木を食べるようです。
成虫の寿命は3か月程度と短くて、あまり飼育に向く昆虫ではないのかもしれません。


 ゴマダラカミキリ(イメージ画)


大人になってイチジクのことをもっと勉強してみると、イチジクの生育にはとても興味深い昆虫がかかわっていることが分かりました。
日本のイチジクには種がありません。
これは、イチジクの受粉を手助けするイチジクコバチ(Fig wasp)という昆虫が、日本に居ないからだそうです。
種ができないので、イチジクを増やす手段は枝挿しです。


 イチジクコバチ(イメージ画)


イチジクは、花が実の中にあるという変わった構造をしています。
イチジクの花は、実の中の小部屋に咲き、イチジクコバチがやってくるのを待つのです。
花粉を付けたイチジクコバチが、外から内部の小部屋へと入っていき、雌花に受粉させるのです。
イチジクの先に開いた穴(写真矢印)から、きっとコバチが入るのでしょう。


 


小部屋の中に入ったコバチは、イチジクに卵を産みつけます。
やがて卵から幼虫が孵り、サナギとなり、成虫が部屋の中で羽化します。
イチジクコバチのメスには翅がありますが、オスにはないんだそうです。


  イチジクの小部屋(白矢印)


羽化したオス・メスで交尾が済むと、オスはイチジクの皮に向けて脱出用の穴を掘ります。
オスは穴を掘ると死んでしまいますが、メスがこの穴を通って実の外に這い出ていくのです。
一生をイチジクの中で過ごし、最後にメスのために穴を掘って死んでいく。
悲しい人生のようにも思えますが、人間も同じようなものかもしれません。


  花が咲き、コバエが育つ小部屋


メスが這い出すころ、イチジクの小部屋には雄花が咲き、メスの体に花粉を付着させます。
外に出たコバチのメスは、他のイチジクの実の中へと入っていき、受粉を手助けします。
このような共生のサイクルが繰り返されるようです。
身近な果物にも面白いトリビアが隠されているものですね。


イチジクコバチを実際に見てみたい気もしますが、日本に居ないのは幸いかもしれません。
食べたイチジクの中に、コバチが入っていると困りますから。